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定耐用年数では、クレーンは7年、台船は14年となっており、クレーンの能力アップが求められる場合はクレーンの据え換えでは済まず(復原性の問題があるため)、台船ごとの建造が必要となり、新規建造需要に結びつくものであると考えられる。同時に、これら中規模クラスの作業船はまだ中古船市場に多く出回っていないという背景もあり、道内造船業界としては、新規建造需要取り込みの狙い目であるといえよう。
また趨勢として、工事で使用される消波ブロック等の大型化という傾向があるとは認識しつつも、それに対応する形で一律作業船の大型化が進展すると考える海洋土木事業者は少なく、その観点からも、今後も使い勝手のよい中型作業船需要は一定規模存在すると指摘する業者が多い。
従来、道内上もの付き作業船の主力であった吊り能力100トン未満の起重機船であれば、道内での台船建造も海洋土木事業者の有効な選択肢として存在していた。それは、道内造船所でもある程度不安なく新造発注ができるなどの理由があったからである。しかし、今後はワンランク上の能力(吊り能力100〜150トン以上の中型クラス)のもののニーズが主力となるため、これを放置しておくと新造発注の大部分が道外造船所へ流出するという事態が懸念される。従って、そうした最悪のシナリオを回避する上でも、今後は道内海洋士木事業者のニーズに合致した中型クラスの起重機船建造に関する道内建造のシェアを高め、海洋土木事業者からの信頼を得ていくことが必要であろう。
(参考)下のグラフは、船齢(5年単位)に対する吊り能力の推移を示したものである。
これをみると、船齢10年を経過したもの(更新時期が迫っているもの)については、吊り能力50トン〜99トンの占める割合が高く、また、船齢0〜5年(最近建造されたもの)の吊り能力の傾向としては、100〜149トン吊りが増加傾向にあり、次いで150〜199トン吊り、200トン吊り以上の大型船が追う形になっている。海洋土木事業者の新造におけるトレンドとして、100トン〜150トン吊り級、もしくはそれ以上の吊り能力に対するニーズが高まっていることが分かる。

吊り能力の推移(船齢ベース)

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